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これも仁和寺の法師第二回

(原文)打ち割らんとすれど、たやすく割れず、響きて堪へがたかりければ、かなはで、すべきやうなくて、
(語句) (現代語訳)打ち割ろうとするのだが、簡単には割れず、音が頭に響いて我慢できなかったので、思い通りに割ることもできず、どうしようもなかったので、
(原文)三つ足なる角の上に帷子をうちかけて、手を引き杖をつかせて、京なる医師のがり率て行きける道すがら、人のあやしみ見ること限りなし。
(語句) (現代語訳)三本の足の角の上に着物をかぶせて、その手をひき、杖をつかせて、都にいる医者のもとへ連れていった道中、人々が不思議に思って見ることはこの上ない。
(原文)医師のもとにさし入りて、向かひゐたりけんありさま、さこそ異様なりけめ。ものを言ふも、くぐもり声に響きて聞こえず。」
(語句) (現代語訳)医者のところへ入って、医者と向かいあっていたであろう様子はさぞかし異様であったろう。
(原文)「かかることは、文にも見えず、伝へたる教へもなし。」と言へば、また仁和寺へ帰りて、親しき者、老いたる母など、枕上に寄りゐて泣き悲しめども、聞くらんともおぼえず。
(語句) (現代語訳)「このようなことは医書にもないし、口伝えの治療法にもない。」と言うので、また仁和寺に帰って、親しい者や老いた母などが、枕元に寄り集まって、泣き悲しむが、本人が聞いているとも思えない。
(原文) かかるほどに、ある者の言ふやう、「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらん。ただ力を立てて引きたまへ。」とて、
(語句) (現代語訳)こうしているうちに、ある者が言うには、「たとえ耳や鼻が切れてなくなったとしても、命ばかりはどうして、生きないことがあろううか、いや生きる。ただ力をこめて引っ張てみなさい。」と言うので、
(原文)藁のしべをまはりにさし入れて、かねを隔てて、首もちぎるばかり引きたるに、耳鼻欠けうげながら抜けにけり。からき命まうけて、久しく病みゐたりけり。
(語句) (現代語訳)わらしべを首のまわりにさしこんで、足鼎を首から離すようにして、首がちぎれるほど強く引っ張ったところ、耳や鼻はちぎれて、穴があいたようになったものの、足鼎は抜けてしまった。この法師はあやうく命をとりとめて、その後長らく病んでいたそうだ。                            (第五三段)