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をりふしの移り変はるこそ

(原文)をりふしの移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ。
(語句) (現代語訳)季節が移り変わることは、もののそれぞれにつけて、趣深い。
(原文)「もののあはれは秋こそまされ。」と人ごとに言ふめれど、それもさるものにて、いまひときは心も浮きたつものは、春の気色にこそあめれ。
(語句) (現代語訳) 「ものの情趣は秋が優れている。」と誰もが言うが、それももっともだが、なおいっそう心も浮き立つものは、春の様子にこそあるようだ。
(原文)鳥の声などもことのほかに春めきて、のどやかなる日かげに、垣根の草萌え出づるころより、やや春深くかすみわたりて、花もやうやう気色だつほどこそあれ、
(語句) (現代語訳)鳥の声もとりわけ春らしくなり、のどかな日差しを受けて、垣根の草が芽を出すころから、しだいに春も深まり、一面に霞みが立ちこめて、桜の花もしだいに咲き始めるころ、
(原文)をりしも雨風うち続きて、心あわたたしく散り過ぎぬ。
(語句) (現代語訳)そんな折り、雨や風が続いて、あわただしく散ってしまう。
(原文)青葉になりゆくまで、よろづにただ心をのみぞ悩ます。
(語句) (現代語訳)桜が青葉になっていくまで、何かにつけてただ人の心を悩ますのである。
(原文)花橘は名にこそ負へれ、なほ、梅のにほひにぞ、いにしへのことも立ち返り恋しう思ひ出でらるる。
(語句) (現代語訳)橘の花は昔を思い出させるものとして有名であるが、やはり、梅の香りにこそ昔のことも当時にたちもどってなつかしく思い出させるものである。