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をりふしの移り変はるこそ2

(原文)山吹の清げに、藤のおぼつかなきさましたる、すべて、思ひ捨てがたきこと多し。
(語句) (現代語訳)山吹の花がさっぱりとして美しく咲いているのや、藤の花がたよりなげな様子でいるのも、すべて、見捨てることができないことが多い。
(原文)「灌仏のころ、祭りのころ、若葉の、梢涼しげに茂りゆくほどこそ、世のあはれも、人の恋しさもまされ。」と人の仰せられしこそ、げにさるものなれ。
(語句) (現代語訳)灌仏会のころ、葵祭のころ、若葉の、梢が涼しそうに茂ってゆくころには、世の中のしみじみとした情趣も、人を恋しく思う気持ちも一段とまさっている。」とある人がおっしゃったのこそ、全くその通りである。
(原文)五月、あやめふくころ、早苗とるころ、水鶏のたたくなど、心細からぬかは。
(語句) (現代語訳)五月、節句で軒に菖蒲の葉をさすころや、早苗を取るころ、水鶏が戸をたたくような声で鳴くのは、寂しくないことがあろうか。
(原文)六月のころ、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり。六月祓またをかし。
(現代語訳)六月のころ、みすぼらしい家に夕顔の花が白く見えて、蚊遣火がくすぶるのもしみじみとして趣がある。六月祓もまた趣がある。
(原文)七夕祭るこそなまめかしけれ。
(語句) (現代語訳)秋になって、七夕をまつるさまは優雅である。
(原文)やうやう夜寒になるほど、雁鳴きて来るころ、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、取り集めたることは秋のみぞ多かる。また、野分の朝こそをかしけれ。
(語句) (現代語訳)しだいに夜が肌寒くなるころ、雁が鳴きながら渡ってくるころ、萩の下葉が色づく時分、早稲の田を刈り取って干すなど、寄せ集めいることは秋が特に多い。また、台風の吹いた翌朝のようすは、まことに趣がある。
(原文)言ひ続くれば、みな「源氏物語」「枕草子」などにことふりにたれど、同じこと、また今さらに言はじとにもあらず。
(語句) (現代語訳)こう言い続けてくると、みな「源氏物語」「枕草子」などに言い古してしまったことではあるが、また言ってはならないということでもない。
(原文)おぼしきこと言はぬは、腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ、あぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。
(語句) (現代語訳)思ったことを言わないのは、腹がふくれたようで不快なことだから、筆にまかせながら書いたつまらない慰み事で、書くそばから破り捨てるべきものだから、他人が見るのがよいというものではない。