吉田と申す馬乗り
| (原文) 吉田と申す馬乗りの申し侍りしは、「馬ごとにこはきものなり。
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現代語訳)吉田と申す馬乗名人が申しましたことには、「どの馬もみな手ごわいものである。
(現代語訳)人間の力は、馬とはりあうことができないと知るのがよい。
| (原文)乗るべき馬をば、まづよく見て、強きところ、弱きところを知るべし。
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(現代語訳)これから乗ろうとする馬をまづ、よく見て、強い所と弱い所とを知らなくてはならない。
| (原文)次に、轡・鞍の具に、あやふきことやあると見て、心にかかることあらば、その馬を馳すべからず。
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- 轡→くちわの転。馬の口にかませる器具
- 馳す→走らせる
(現代語訳)次に轡や鞍の器具に危ないところがありはしないかとよく見て、気にかかることがあるならば、その馬を走らせてはならない。
| (原文)この用意を忘れざるを、馬乗りとは申すなり。
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(現代語訳)この心づかいを忘れない人を馬乗りと申すのである。
(現代語訳)これは(馬乗りの)秘訣である。
(感想)兼好は東国武士の逸話を、道の達人としてとらえ、自分の人生道の主張に組み込んでいる。
(別バージョン現代語訳) 吉田と申す馬乗りが申しましたことには、「どの馬もみな手ごわいものである。人の力は、馬と張り合えないと知らなければならない。乗るはずの馬を、まずよく見て、その馬の強いところ、弱いところを知らねばならない。次に、轡・鞍の器具に危なっかしいところはないかと調べてみて、気にかかることがあるなら、その馬を走らせてはならない。この心遣いを忘れないのを、馬乗りとは申すのだ。これは乗馬についての秘訣である。」と申した。